ばけばけ ~ 小泉八雲の怖い話「忠五郎のはなし] :1分怪談

ばけばけ ~ 小泉八雲の怖い話「忠五郎のはなし]
江戸小石川に仕える足軽、忠五郎は、夜な夜な屋敷を抜け出すようになり、顔色が蒼白く衰えていきました。心配した同僚に問いただされ、忠五郎は秘密を打ち明けます。
五ヶ月前の春の初め、忠五郎は川岸で美しい女性に出会いました。彼女は「あなたを夫にしたい」と告げ、彼を深い水の中へ引き込みました。
気がつくと、二人は濡れることなく、明るく豪華な御殿のような場所に立っていました。女はそこで忠五郎と婚礼の宴を挙げ、毎晩同じ時刻に川岸に来るよう約束させました。
女は「この結婚は秘密にすること。もし人に話したら、もう永久に別れなければならなくなる」と忠告しました。忠五郎は、これは浦島太郎の物語のような経験だと思いながら、毎晩、水中の御殿へ通い続けたのです。
忠五郎の話を聞いた同僚は、彼が何か悪いものに魅入られていると恐れましたが、口外しないと約束しました。しかし、忠五郎は秘密を話したことを後悔し、その夜は川岸に女の姿はありませんでした。
「あなたにお話したのは私の誤りでした。もう再び私には会いますまい」
忠五郎はそのまま倒れ、悪寒に震え始めました。夜明けに呼び出された漢方医は、彼の体を診察し、驚くべきことを告げました。
「この人には血がない。脈管には水ばかりしかない。これはむつかしい病人だ」
忠五郎は同僚の懸命の看病も空しく、その日の日暮れに息を引き取りました。
全てを聞いた医師は叫びました。
「あの女に生命(いのち)を取られたのはこの人が始めてではない。どんな力も助けることはできない!」
同僚が女の正体を問うと、医師は答えました。
「昼、あの橋の下で見たら実にいやな動物に見えるだろう。ただの蟇(がま)さ、――大きな醜い蟇だ」
忠五郎は、川に棲む巨大なヒキガエルに精気を吸い尽くされて死んだのでした。
江戸小石川に仕える足軽、忠五郎は、夜な夜な屋敷を抜け出すようになり、顔色が蒼白く衰えていきました。心配した同僚に問いただされ、忠五郎は秘密を打ち明けます。
五ヶ月前の春の初め、忠五郎は川岸で美しい女性に出会いました。彼女は「あなたを夫にしたい」と告げ、彼を深い水の中へ引き込みました。
気がつくと、二人は濡れることなく、明るく豪華な御殿のような場所に立っていました。女はそこで忠五郎と婚礼の宴を挙げ、毎晩同じ時刻に川岸に来るよう約束させました。
女は「この結婚は秘密にすること。もし人に話したら、もう永久に別れなければならなくなる」と忠告しました。忠五郎は、これは浦島太郎の物語のような経験だと思いながら、毎晩、水中の御殿へ通い続けたのです。
忠五郎の話を聞いた同僚は、彼が何か悪いものに魅入られていると恐れましたが、口外しないと約束しました。しかし、忠五郎は秘密を話したことを後悔し、その夜は川岸に女の姿はありませんでした。
「あなたにお話したのは私の誤りでした。もう再び私には会いますまい」
忠五郎はそのまま倒れ、悪寒に震え始めました。夜明けに呼び出された漢方医は、彼の体を診察し、驚くべきことを告げました。
「この人には血がない。脈管には水ばかりしかない。これはむつかしい病人だ」
忠五郎は同僚の懸命の看病も空しく、その日の日暮れに息を引き取りました。
全てを聞いた医師は叫びました。
「あの女に生命(いのち)を取られたのはこの人が始めてではない。どんな力も助けることはできない!」
同僚が女の正体を問うと、医師は答えました。
「昼、あの橋の下で見たら実にいやな動物に見えるだろう。ただの蟇(がま)さ、――大きな醜い蟇だ」
忠五郎は、川に棲む巨大なヒキガエルに精気を吸い尽くされて死んだのでした。
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