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トラウマの怖い話 実家が火事となった記憶から異音が耳にこびりつき。 ホラーIQ - 無料 ダウンロードなし


トラウマの怖い話 実家が火事となった記憶から異音が耳にこびりつき。

結衣には、たった一人の理解者がいた。三歳年上の兄、陽介だ。 十年前、実家が火事になった際、陽介は炎の中に飛び込んで結衣を救い出した。その時の後遺症で結衣は「カツ、カツ」という乾燥した音――火が柱を噛むような、あるいは何かが爆ぜるような音――を聞くと、激しいパニック発作に襲われるようになった。

「大丈夫か、結衣。俺がついてる」

独り暮らしを始めてからも、陽介は頻繁に電話をくれた。スマホから聞こえる彼の穏やかな声だけが、結衣を現実の世界に繋ぎ止めていた。



ある夜、結衣は寝室で、あの忌まわしい音を聞いた。

「カツ……カツ……カツ……」

クローゼットの奥から響くその音に、結衣は震えながらスマホを手に取った。すぐに陽介にダイヤルする。 「お兄ちゃん! またあの音がするの。怖い、助けて!」

『……落ち着け、結衣。深呼吸するんだ。俺は今、お前の家のすぐ近くまで来ている。もうすぐその音は止むからな』

陽介の声を聞くと、不思議と動悸が収まった。だが、電話の向こうから「カツ、カツ」という音が、部屋に響く音と完全に同期して聞こえてくることに気づく。

「お兄ちゃん……今、何か叩いてる?」 『いや、何も。それより結衣、大事な話があるんだ。実家の遺品整理が終わった。お前がずっと探していた「あの日」の思い出の品、俺が持っているよ』




結衣は受話器を肩に挟みながら、音のするクローゼットを勢いよく開けた。 中には、見覚えのない古い木箱が置かれていた。

「お兄ちゃん、これのこと? 箱がある……」 『ああ、それを開けてごらん。俺とお前を繋ぐ、唯一の証だ』

結衣が震える手で箱の蓋を開けると、中に入っていたのは、黒く焼け焦げ、不自然にねじ曲がった「人間の指の骨」だった。

混乱する結衣の耳元で、陽介の声が冷たく響く。 『十年前、お前を窓から放り出した後、俺は逃げ遅れた。……気づいていただろう? 俺はずっと、お前のすぐそばにいたんだ。火事のあと、お前が瓦礫の中からこっそり持ち帰った「俺の一部」の中に』

結衣が悲鳴を上げてスマホを投げ出すと、それは床に落ちる前に消えてなくなった。 自分の手元を凝視する。 彼女が耳に当てていたのは、スマホではなかった。

クローゼットの中の指の骨と対になる、一本のどす黒く焦げた「腕の骨」を、彼女は愛おしそうに耳に押し当てていたのだ。

ここに掲載されている怪談はフィクションでいかなる個人・団体と関係ありません

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