雨夜の傘 ：ホラーIQ

雨夜の傘

雨の夜、仕事帰りに傘を差して歩いていた。
静かな路地で水溜まりを避けながら進んでいると、ふと隣にもう一本の傘が並んだ。

見上げても誰の姿もない。
だが、雨粒は確かにその傘に打ちつけていた。
驚いて立ち止まると、傘も同時に止まる。
歩き出せば、またぴたりと寄り添ってくる。

耳を澄ますと、足音がもう一つ、確かに聞こえていた。
怖くなって走り出すと、雨音に混じって「待って」という声が聞こえる。

家に駆け込み、傘を閉じると、布の内側がぐっしょりと濡れていた。
そこには小さな泥だらけの手形が、無数に広がっていた。