小泉八雲の怖い話 お貞 :ホラーIQ

小泉八雲の怖い話 お貞
越後・新潟に、長尾長生という青年がいた。
医家の跡取りで、幼いころから許嫁のお貞と将来を誓っていた。
今年の冬に結婚するはずだったが、お貞は不治の病に倒れる。
死を悟った彼女は、枕元で微笑んだ。
「私はまたこの世に戻ります。十五年か十六年、女として成人し、必ずあなたのもとへ」
長尾は涙をぬぐい「待つ」と誓った。
やがて彼女は静かに息を引き取った。
年月が流れ、両親も妻子も亡くし、長尾はひとり旅に出た。
伊香保の宿で給仕に現れた若い女――その顔に胸が震える。
亡きお貞と瓜二つだった。
「名は?」と問うと、彼女はやわらかい声で答えた。
「お貞です。あなたが書き封じた約束を、私は覚えています」
その瞬間、彼女はふっと意識を失った。
やがて二人は結ばれたが、長尾はもう確かめることができなかった。
彼女が何者であったのか、どこから来たのか――
あの日の答えだけが、霧のように思い出せなかった。
(※パソコンのエッジで読み聞かせ機能を使うには、Ctrl+Shift+U」を押します。)越後・新潟に、長尾長生という青年がいた。
医家の跡取りで、幼いころから許嫁のお貞と将来を誓っていた。
今年の冬に結婚するはずだったが、お貞は不治の病に倒れる。
死を悟った彼女は、枕元で微笑んだ。
「私はまたこの世に戻ります。十五年か十六年、女として成人し、必ずあなたのもとへ」
長尾は涙をぬぐい「待つ」と誓った。
やがて彼女は静かに息を引き取った。
年月が流れ、両親も妻子も亡くし、長尾はひとり旅に出た。
伊香保の宿で給仕に現れた若い女――その顔に胸が震える。
亡きお貞と瓜二つだった。
「名は?」と問うと、彼女はやわらかい声で答えた。
「お貞です。あなたが書き封じた約束を、私は覚えています」
その瞬間、彼女はふっと意識を失った。
やがて二人は結ばれたが、長尾はもう確かめることができなかった。
彼女が何者であったのか、どこから来たのか――
あの日の答えだけが、霧のように思い出せなかった。
トップページ
次の話:小泉八雲の怖い話 おしどり
人気の怖い話
その他おすすめの怖い話
トップページ
*注:本サイトの怖い話はすべてフィクションであり、実在する団体とは一切関係ありません。
本サイトを見て気分が悪くなった方はすみやかにこのサイトからたちさってください。
